企業法務とは
企業法務とは、企業経営にかかわる法律問題一般に対応する業務のことをいいます。一口に企業の法律問題といっても様々なものがあるため、企業法務の内容も多種多様になります。
企業法務の分類方法としては、主に、①活動対象による分類、②活動方法による分類があります。
活動対象による分類は、企業の「外」に対する法務活動か企業の「内」に対する法務活動かに着目した分類方法です。
「外」に対する法務としては、主に契約・取引法務があげられます。相手方と交渉して、いざ訴訟となった際に自社にとって有利な契約内容となるよう努める、契約の内容が法令に違反していないか精査する、契約書の作成や要式・文言の確認をするなどの活動が契約・取引法務の具体的な内容となります。また、定期的に催告を行い時効を更新させるなどして、売掛金など債権の消滅時効の完成を阻止するなど、契約後に相手方の債務履行のため適切な対応をとるのも契約・取引法務に含まれます。
つまり、取引先とのトラブルの発生を予防しつつ、契約を最大限有利な内容にして、確実な債権回収を図るよう努めるのが契約・取引法務といえます。
「内」に対する法務としては、主に組織法務があげられます。会社法などの法令に従って、株主総会や取締役会など企業内組織の運営や運営の支援を行うのが組織法務となります。
例えば、会社法は、株式会社の最高意思決定機関である株主総会について、定時株主総会と臨時株主総会の招集事由、招集の方法、決議事項、議決権を付与される株主の範囲、議事録の作成義務と保存方法など、細かい規定を設けており、総会の運営に法令違反があった場合には株主から訴訟提起され、場合によっては総会決議の取消などが行われる可能性があります。
このように、会社組織の運営に法令違反があれば無用の紛争を生じさせるおそれがあるため、組織法務によって未然に紛争を防止する必要があるのです。
活動方法による分類では、裁判法務、予防法務、戦略法務があります。裁判法務はトラブルが発生し催場に発展した際に対応する法務活動、予防法務はトラブルの発生を未然に防ぐ法務活動、戦略法務は経営戦略において法律を念頭においた意思決定を行う法務活動をいいます。
近年は、自社の知的財産の保護にあたって、特許登録をして特許法による保護を用いるか不正競争防止法における営業秘密にかんする情報漏洩についての罰則規定を用いるかなど、経営戦略の策定に法的観点が欠かせなくなりつつあり、戦略法務の視点が重要となってきています。