就業規則が必要な理由や見直しの重要性について
就業規則は、あらゆる会社に作成が義務付けられているわけではありません。
しかし作成すべき義務が課されていないときでも、作成しておくことが望ましいと考えられています。
また、一度作成した就業規則についても継続的に見直しの機会を持つことが大事です。
これらの理由をここで解説します。
就業規則はなぜ必要か
就業規則は、会社で働く従業員が遵守すべき基本的なルールを定めたものです。
さまざまな人間が会社で一緒に労働をしますが、会社という組織がまとまるためには、共通のルールが必要です。
企業秩序を維持し、その上で個の力を発揮していくことが会社全体としての生産性にも関わってきます。
ただ、就業規則は会社が従業員に対して一方的に義務を課すものではありません。
会社と従業員の双方が守るべきルールであり、互いの権利を守るとともに、互いの義務を果たすことが大きな目的です。
就業規則がない場合に想定されるリスク
就業規則が作成されていない、あるいは適切に作成されていない場合、会社はさまざまなリスクにさらされることになります。
1つは法令違反によるペナルティのリスクです。
法令上、就業規則を作成すべき状況においてこれを作成していない場合、罰則が適用されるリスクがあります。
また、これに付随して世間からの評判を落としてしまうというリスクも生じます。
次に、従業員を統率できないというリスクが挙げられます。
従業員全員に適用する共通ルールがないと、働き方や禁止事項などを統一することができず、従業員をまとめあげるのが難しくなります。
また、恣意的な対応による従業員とのトラブルが生じるリスクも高くなってしまいます。
就業規則が作成されていれば、従業員に対する評価や懲戒処分などの対応も公平に行いやすくなります。
逆に就業規則がなければあいまいな対応、恣意的な処分が増えてしまい、従業員からの不満が蔓延してしまいます。
懲戒処分の際も、根拠が示せないため、訴訟にまで発展したときに会社側は不利な立場に立たされてしまいます。
就業規則の作成が義務付けられるケース
就業規則については、労働基準法で、“常時10人以上の労働者を使用する使用者”に作成・届出等の義務を課しています。
“労働者”は従業員のこと、“使用者”は会社のことを指しています。
そして“常時10人以上”の解釈ですが、ここにカウントする従業員は雇用形態を問われません。アルバイトでも、契約社員でも、正社員でもここに含めて数えます。
また、実際に常に10人以上が出勤していることまでは求められておらず、所属をしている人数で考えます。
ただし、事業場が異なる場合は、別個にカウントします。
会社全体としては10人以上が所属しているものの、本店と支店でそれぞれ9人ずつしか従業員が勤めていないときは、作成義務は課されません。
就業規則に定める事項
就業規則の作成義務が課されている場合、少なくとも次の3つの事項については記載されていなければなりません。
絶対的必要記載事項 |
詳細 |
---|---|
労働時間関係 |
始業の時刻 終業の時刻 休憩時間 休日に関する事項 労働者を2組以上に分けて交替で就業させるときは、就業時転換についての事項 |
賃金関係 |
賃金の決定または計算方法 賃金の支払い方法や支払い時期 賃金の締め切り 昇給に関する事項 ※賞与に関する事項は除く |
退職関係 |
解雇事由を含む、退職に関わる事項 ※退職手当に関する事項は除く |
その他、特定の事項について就業規則に定めなければ効力が生じないものもあります(相対的必要記載事項)。
例えば「退職手当」「賞与」「作業用品の負担」「安全衛生」「職業訓練」「表彰や制裁」などに関する事項があります。
他にもさまざまな事項を定めることができますが、法令および労働協約に反する事項は定められません。
就業規則の見直しも重要
「就業規則を作成してれば絶対安心!」ということでもありません。
実際、多くの会社には就業規則が設けられていますが、だからといって従業員とのトラブルが確実に予防できているわけではありません。
そもそも現状の就業規則に規定されている一部の事項について不満を持たれている可能性もあります。
こうした不満は、特に退職後に顕在化しやすいです。
在職中だと不満を訴えることで会社側から冷遇されるリスクがあると考えるからです。
そのため退職後に労働基準監督署等に問題を持ち込んで対処してもらう、といった行動を取ります。
トラブルになってから個別対応していると、時間もコストもかかってしまいます。
そこで “就業規則の見直し”を行い、予防および迅速な事後対応が取れるようにしておきます。
就業規則に関してチェックすべきポイント
トラブルを予防するため、そして発生したトラブルに対して適切な対応を取るため、就業規則を見直してみましょう。
厚生労働省やその他Web上にあるひな形をほとんどそのままの形で使用しているのであれば、全般的に見直す必要があるでしょう。
作成された時期、最後に修正した時期にも着目します。
その時期から現在にかけて、法改正があった場合、改正法に準拠できていない可能性があります。
また、具体的に自社で起こり得るトラブルを想定した内容になっているかどうかも要チェックです。
自社の事業内容や職場環境などと照らし合わせて、実際に起こる可能性が高いと思われるトラブル、あるいは可能性自体は低いものの大きな損害が生じるトラブルなどを考えます。そしてそのトラブルを防ぐために、どのような禁止事項を設けなくてはならないのか、どのような罰則を設けることで抑止できるのか、といったことを考えていきます。
労働基準法など法律の知識も必要になってきますので、社内での対応が難しい場合は、弁護士などの専門家にも相談することをおすすめします。