社外監査役とは?役割と選任する際の要件について
「社外監査役」は、多くの企業にとってそれほど馴染みのある存在ではないかもしれません。
実際、国内企業の設立件数のうち大半を占める中小企業よりも、上場しているような大企業等で設置される機関です。
上場企業ほどガバナンスの強化を図る必要性が高く、だからこそ社外監査役が必要となるのです。
この記事では、社外監査役が企業で果たす役割と、選任をするための要件に注目して解説していきます。
社外監査役の役割について
社外監査役がどのような役割を果たしているのか、通常の監査役との比較を交えて説明していきます。
監査役の役割
社外監査役とは別に、「監査役」がいます。こちらの方が設置例も多い機関です。その役割は“取締役の仕事ぶりをチェックすること”にあります。
会社法第381条第1項前段でも次の通りに規定が置かれています。
監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。
株式会社では所有と経営が分離しており、社員が常に経営の実務を行うわけではありません。社員である株主は取締役に経営を委任しており、取締役は株主の利益を確保するために善管注意義務を負います。公正に、適切に、経営を実施する義務を負っているということです。
しかしながら取締役には強い権限がありますので、その権利の濫用により大きな私益を得ることも可能です。
また、その事実を隠すこともそれほど難しいことではありません。
そこで機能するのが監査役です。業務執行がきちんと行われているかどうかを見張り、取締役の不正を防ぐために選任されます。
社外監査役の役割
社外監査役も監査役と同じ役割を担いますが、より監査役としての機能を強めるために設置される機関です。
例えば元々社内の人員の1人であった者が監査役となった場合、実質あまり機能しない可能性もあります。監査対象となる取締役とも仲間内であり、厳しい監査をできないおそれがあるのです。
そこで“社外”の監査役であることが意味を持ちます。
就任以前にその会社や子会社に在席実績のない人物から社外監査役は選任されますので、社内の昇任を経て監査役になった人物とは性質が大きく異なります。
取締役との繋がりも薄く、厳しい監査を行いやすくなります。
特に規模が大きく利害関係者の数が多いような会社では、取締役が適切に業務執行していることの担保として、社外監査役が求められます。
また、通常の監査役同様、会計に関する監査も行います。
会社の会計が適切であるかどうか、粉飾をしていないかどうか、社内の監査役とも連携しつつチェックしていきます。
一方で出勤の頻度に関しては通常の監査役と差があることが多いです。通常の監査役は常勤で職務に就くケースが多く、常にいないにしても週のうち数日ほどは出勤することが多いとされています。
しかしながら社外監査役の場合は非常勤であることの方が一般的です。月に数回程度、取締役会や監査役会に合わせて出勤するという例もあります。
社外監査役が必須となるケース
監査役会を設置している会社には、社外監査役を設置しなければなりません。
監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。
条文にあるように、社外監査役を設置するだけでなく、“監査役会を構成する人員の半数以上”という指定までされています。
「監査役を3人以上置くこと」「その半数以上を社外監査役とすること」が求められている以上、社外監査役が必置となる場面では少なくとも2人以上の選任が必要となります。
また、監査役会の設置義務がある会社は“大会社かつ公開会社である会社”です。
大会社とは、①資本金額5億円以上、または②負債額が200億円以上のいずれかに該当する会社を指します。
そして公開会社とは株式の譲渡が自由にできる会社を指します。
ごく簡単に解釈すると、「非常に規模が大きく、身内に限らず外から株主が自由に参加できる会社だと社外監査役が必要」であると説明することもできます。
なお、上の要件を満たさなくても任意に監査役会および社外監査役を設置することは可能です。
よりガバナンスの強さをアピールするために進んで設置するのも良いかもしれません。
社外監査役選任の要件について
社外監査役になるには、できるだけ当該株式会社との繋がりが希薄であることが必要です。
そこで次のような要件を満たす必要があります。
- 前10年の間に当該会社で取締役や使用人などであった経験がないこと
- 当該会社の親会社の取締役や使用人などでないこと
- 当該会社の親会社の子会社において業務執行取締役でないこと
- 配偶者や2親等内の親族に、当該会社の取締役や使用人などがいないこと など
なお、前10年の間に当該会社やその子会社の監査役であった経験があっても、その監査役としての就任から前10年の間に当該会社やその子会社の取締役や使用人などであった経験がないのなら、社外監査役になることは可能です。
会社法第2条第16号に要件が細かく規定されておりますので、一度詳細を確認しておくと良いでしょう。
また、社外監査役の活用や選任に関しては一度専門家に相談して助言を受けておくことをおすすめします。
社外監査役には高い専門性が求められ、外部の弁護士や公認会計士などを選任することが多いです。
その分コストもかかってきますので、よく考えないまま設置するのではなく、費用対効果が高められるようプロの意見も取り入れて検討を進めていきましょう。