医療過誤事件に必要不可欠な「協力医」とは? 探し方や選び方も併せて解説
医療裁判においては、医療に関する専門知識を持つ医師の協力が不可欠です。被告側の医療機関が医療のプロである以上、それに対抗するためには同程度のスキルを持ち合わせた人間が必要になるからです。
当記事ではこの協力医について言及し、協力医がなぜ必要なのか、どうやって探すのか、選び方なども解説します。
協力医とは
医療過誤事件における「協力医」とは、患者側の弁護士をサポートして、医療事故や医療過誤の問題に関する助言や援助等を行う医師のことです。事件の内容が医学に関わる非常に専門性が高いものであり、やはり現場で日々診療行為を行っている医師の意見も参考にする必要があります。そのため、医療過誤訴訟を行う際は医学の専門家である医師の協力が不可欠だというケースが多々あります。
協力医の具体的な役割
協力医の具体的な役割は、以下のとおりです。
協力医によるサポートの例 | |
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カルテのレビュー | 患者のカルテをレビューして医療過誤の有無や程度を判断。カルテから、医師の診断や治療方針、患者の病状、患者の同意状況などを確認する。また、カルテに記載されていない情報について患者や医療機関に確認を行う。 |
医療過誤の原因を特定 | 医療過誤の原因を調査する。医療過誤の原因としては、医師の過失、医療機関の設備や体制の問題、患者の体質や病状の問題など、さまざまな要因が考えられる。協力医が分析し、原因特定に努める。 |
患者の損害の程度を調べる | 医療過誤によってどのような損害を患者が被ったのか、症状などからその程度を判定する。弁護士等と協力して具体的な損害額の算定に寄与する。 |
裁判での証言 | 医療過誤の有無や程度、原因、患者の損害などを明らかにするための証言を行い、裁判で患者が不利にならないようサポートする。 |
証拠の収集や原因特定、損害額の算定など、弁護士も通常は行う行為ですが、医療領域であるなど特に専門性が高い場合はその道のプロである医師のサポートも欠かせません。
協力医の探し方
協力医の協力を得ることができれば、訴訟を有利に進めることができる可能性が高くなります。そこで医療過誤の事案で困っている方は、協力医を探すと良いでしょう。協力医の探し方としては、以下の方法があります。
- 医師に直接アポを取る方法
- 医療問題の支援団体から紹介してもらう方法
- 弁護士に紹介してもらう方法
医師に直接アポを取る
論文の著者等に直接アポを取り、依頼をすることも可能です。医療分野の論文を執筆している医師であれば医師の中でもとても高い専門性を有している可能性が高く、協力医として適任であるといえます。特に今直面している医療過誤問題に絡む領域を取り扱っている医師であればなおさらです。
しかし、直接連絡を取る際は、以下の点に注意する必要があります。
- 医師側には、協力医となる義務がないことを理解する
- 丁寧な対応を心掛け、医師との信頼関係構築に努める
- 医師の時間をもらう分、費用が発生すると理解する
- 具体的な情報を提供する
誰でも求めれば協力医になってくれるわけではありません。また、非常に高い専門性を持つプロに依頼を出すということはそれ相応の費用がかかることも忘れてはいけません。
また、当然ながら依頼を出す立場ですので丁寧な対応が大前提であり、協力医となるかどうかの判断をしやすくするため、できるだけ具体的な情報を提供しましょう。
医師に人助けをしたい気持ちがあっても、専門領域でない場合は協力ができない可能性があります。その判断をするためにも、今どのような問題に悩んでいるのか、具体的な症状や受けた治療のことなどを詳細に伝えることが大事です。
医療問題を支援する団体で紹介してもらう
医療過誤に関連する患者支援団体で、医療過誤に対応するための協力医を紹介してくれるサービスを提供していることがあります。支援団体を介してお願いを出すことで、直接アポを取るよりも依頼を引き受けてくれる可能性は高くなります。
また、支援団体との繋がりを持つことで、医療過誤事件全般に関するアドバイスが得られることもあります。
医療過誤に関わる支援団体としては、例えば「医療問題弁護団」があります。
医療問題弁護団は、医療事故の再発防止や被害者救済、良質な医療確立などを主目的とする団体で、200名を超える弁護士が所属しています。被害者救済の一環として、協力医の紹介なども行っています。
他の支援団体として「医療事故情報センター」もあります。
医療事故情報センターには、医療事故被害者の救済に向けて活動する全国の弁護士から構成される団体です。被害回復、再発防止、そして具体的活動の1つとして協力医の紹介も行っています。
弁護士に紹介してもらう
協力医との連携を図る手段としてもっとも一般的なのは、「弁護士に協力医を紹介してもらう」という方法です。
医療過誤事件を多く取り扱っている弁護士であれば、協力医と繋がるネットワークを持っています。このような弁護士に相談することで、スムーズに協力医を紹介してもらえるでしょう。
そこでまずは、医療過誤に強い弁護士を探すこと、その弁護士に状況を詳細に伝えることに努めましょう。どのような協力医が必要になるかの判断、医師に対する連絡などは弁護士の方で対応してもらえます。
また、最終目標の1つは損害賠償の請求にあり、この点に限れば通常の法律問題です。損害の内容・原因が医療領域にあるため医師の協力が必要になるところ、請求そのものの手続については法律のプロが必要です。そのため弁護士と医師の両方に繋がる必要があります。弁護士にまずは相談して医師の紹介を受けるのが効率的といえるでしょう。
協力医を選ぶ際のポイント
自分で協力医を探す際は、以下の点に着目することが大事です。
- 医療過誤事件を取り扱った経験があること
- 医療過誤事件に関する専門知識があること
- 弁護士や被害者と信頼関係を築けること
多くの医師は医療行為を仕事としており、裁判などとは無縁です。そのため専門知識を持っていたとしても、それを裁判上有効活用するためのノウハウまでは有していないことが通常です。そこで、できれば医療過誤についての理解もある医師である方が望ましいです。
ただ、弁護士との信頼関係が築けており、医師からの情報を弁護士がうまく処理して裁判上有益な資料とすることができるのであれば問題ありません。
逆に、個人的に連絡をして医師のみと繋がった場合、医師からの情報を自分で有効活用しないといけません。
医療過誤に強い弁護士への相談から始めよう
医療行為を求めて協力医を探すわけではありません。医療過誤事件により生じた損害について、医療機関等に賠償責任を負ってもらうために協力医を探すのです。協力医の存在が重要であることに変わりはありませんが、当該事件について弁護士に代理人になってもらい、請求にかかるさまざまな対応を任せることも重要といえます。
そこで協力医を探すためにも、損害賠償請求を行うためにも、まずは医療過誤の実績が豊富な弁護士を探すことから始めることをおすすめします。
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資格者紹介Staff
法律を知らないばかりに悩んでいる人々の力になりたい。
当事務所は医療過誤のご相談に豊富な経験がございます。
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所属団体・資格等
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
経歴
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- 2008年
- 東洋大学法学部 卒業
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- 2011年
- 東洋大学法科大学院 卒業
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- 2011年
- 司法試験合格
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- 2012年
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弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
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- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要Office Overview
名称 | 初雁総合法律事務所 |
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資格者 | 野口 眞寿 (のぐち まさとし) |
所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
連絡先 (担当:野口) |
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