麻酔事故における医療機関の責任と損害賠償
病気や怪我などの治療を受ける際、麻酔を使用することがあります。
麻酔の使用により苦痛や恐怖を和らげられますが、正しく使用されなければ、かえって患者の健康を害してしまう可能性もあります。
この記事では、麻酔事故が発生した際の医療機関の責任と損害賠償について解説します。
麻酔の使用
麻酔には限定した部位にほどこす局所麻酔や、患者の意識を失わせる全身麻酔などがあります。
全身麻酔のような大掛かりな麻酔をかける際には、麻酔科医が患者の心拍数や呼吸、血圧などを確認し、適切に薬の調整や管理をしなければいけません。
麻酔は治療に必要不可欠ですが、一歩間違えると大きな事故につながる恐れがあるためです。
ただし小規模な局所麻酔などであれば、外科医や歯科医師などが直接麻酔をかけることもあります。
どちらの場合も安全に使用できるよう、医師は細心の注意を払わなければいけません。
麻酔による事故
麻酔時に適切な管理が行われなかった場合、患者にさまざまな影響を与える可能性があります。
たとえば投与した麻酔薬が少なすぎると、手術中に患者が覚醒し、大きな苦痛を味わう恐れがあります。
術後に心的外傷後ストレス障害を発症する恐れもあるほど、その苦痛は耐えがたいものです。
また投与した麻酔薬が多すぎる場合には、体の機能が低下し、心停止などに陥る可能性があります。
脳にダメージを与え障害を負ったり、最悪の場合には死に至る可能性もあったりと、重大な結果につながります。
そのほか、不適切な管理により急変時に迅速な対応を受けられなかった場合には、後遺障害が残る恐れもあります。
麻酔事故における責任と損害賠償
医師は診療や治療の際に十分な注意を払い、適切な対応をとらなければいけません。
医師がこのような義務に違反し、結果として患者に損害を与えた場合には、損害賠償の対象となる可能性があります。
麻酔をかける際に医師がやらなければいけないこと
麻酔をかける際、医師は以下に注意して対応しなければいけません。
- 事前の問診や検査などにより患者の既往歴やアレルギーなどを把握する
- 麻酔をかける際は常に患者の血圧などを監視する
- 麻酔薬の投与量や投与箇所を適切に管理する
- 気道の確保などの手技を適切に行う
- 万が一急変したときには迅速に対応する
このような注意義務をおこたり、結果として患者に損害を与えた場合には、医師や医療機関に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
損害賠償請求できる要件
次の要件を満たすとき、損害賠償を請求できます。
- 医師に故意または過失行為がある
- 患者の利益が侵害され、損害が生じた
- 患者の損害と医師の過失行為に因果関係がある
たとえば事前の問診をおこたり、既往歴の確認不足によって重篤なアレルギー症状を引き起こした場合には、医師の過失が認められることがあります。
また麻酔の投与時に監視をおこたり、容態の変化に適切に対応しなかった場合も同様です。
ただし、医師が適切な対応をしたにも関わらず容体が悪化してしまった場合には、医師の過失とは言えません。
医師の過失が認められるのは、注意義務などの義務に違反した場合のみです。
予測不能な容体の悪化に対し最善を尽くしたものの、結果として障害を負うなどの損害が発生してしまった場合には、不可抗力と判断され損害賠償は請求できません。
また、医師の過失によって容体が悪化したことが証明できない場合にも、損害賠償が認められない可能性があります。
損害賠償請求するには
損害賠償請求時には、医師の過失と発生した損害の因果関係を証明しなければいけません。
医療行為が行われた当時の病院の医療基準を踏まえ、医療行為に技術的な過誤があることを示す必要があります。
医師の責任を追及し、因果関係を証明するには、医療調査が必要です。
医療調査とは、提供された医療行為について医療機関や第三者機関がその内容を調査・分析し、事故が発生した原因を究明するものです。
調査結果は患者側にも報告されます。
医師の行為の妥当性を患者側だけで判断することは難しく、麻酔事故は医療機関内部の出来事でもあるため、専門家による調査が不可欠です。
専門的な調査を行ったうえで調査結果を法的な観点から精査することにより、適切な額の損害賠償を請求できます。
損害賠償請求は示談によって交渉するほか、示談が成立しない場合には、訴訟を起こして請求することもあります。
調査結果の精査や示談交渉などは法的な知識を必要とするため、医療過誤の対応を得意とする弁護士へ依頼すると安心です。
まとめ
この記事では、麻酔事故における医療機関の責任と損害賠償について解説しました。
医師の過失によって麻酔事故が発生し、それにより患者が損害を受けた場合には、医師や医療機関に対して損害賠償請求できる可能性があります。
ただし損害賠償請求するには、医師の過失や因果関係を証明しなければいけません。
専門家による医療調査や法的な観点からの精査により、適切な額の損害賠償を請求できます。
麻酔事故の対応は弁護士へご相談ください。
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資格者紹介Staff
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所属団体・資格等
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
経歴
-
- 2008年
- 東洋大学法学部 卒業
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- 2011年
- 東洋大学法科大学院 卒業
-
- 2011年
- 司法試験合格
-
- 2012年
-
弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
-
- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要Office Overview
| 名称 | 初雁総合法律事務所 |
|---|---|
| 資格者 | 野口 眞寿 (のぐち まさとし) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
| 連絡先 (担当:野口) |
TEL:050-3184-3790/FAX:050-3730-7809 |
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