MRSAの院内感染
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、多くの抗生物質に耐性を持つ黄色ブドウ球菌の一種です。
黄色ブドウ球菌の細胞壁を形成する「細胞壁」は、抗生物質によって攻撃されることで細菌を殺菌する役割を果たします。
しかし、MRSAは「ペニシリン結合タンパク」というタンパク質を産生し、抗生物質であるペニシリンがこのタンパク質に結合して効果を発揮できなくなるため、抗生物質に対して耐性を示します。
実際に、MRSAはペニシリン以外の抗生物質にも耐性を持つことが報告されています。
このような耐性を持つMRSAの存在は、医療現場において治療の困難さや院内感染のリスクを高める要因となっています。
以下では、MRSAの院内感染について見ていきましょう。
MRSAについて
MRSAの感染は免疫力の低下した患者や病院内で広がりやすく、通常の抗生物質では効果が期待できないことがあります。
そのため感染症の治癒は患者の免疫力に左右されます。
また、MRSAは食中毒の原因となる毒素も産生します。
黄色ブドウ球菌は加熱には弱いですが、エンテロトキシンという毒素は熱に強く、食中毒を引き起こす可能性があります。
黄色ブドウ球菌は酸素がなくても増殖し、塩分の多い環境でも毒素を産生することができますので、密閉容器や塩漬けの食品でも食中毒が発生することがあります。
MRSAは院内感染がしやすいものとされており、入院中に病院側が果たすべき注意義務に反して、患者がMRSAの院内感染の被害にあった場合には、患者は病院に対して、その被った損害に対応して損害賠償請求を行うことが考えられます。
MRSAの院内感染
MRSAは、接触感染によってうつります。
MRSAが付着した手で触れたドアノブや蛇口、病院内の設備に触り、これをほかの人が触れることによって感染します。
MRSAは、乾燥した状態であっても、数週間程度生きることができるため、MRSAに感染した人が触れた場所を、数日後に触れても、MRSAになることがあります。
なお、MRSAは、免疫力が低下しているときに発症するものなので、発症の直前に直前に接触感染した場合のみならず、もともともMRSAを持っていたものの、免疫力の低下によってはじめて発症する場合があります。
被害にあったと疑われる者が、病院に訴訟を提起する場合には、以下の事実を立証する必要があります。
すなわち、法的には、不法行為に基づく損害賠償請求あるいは、安全保障義務違反に基づく損害賠償請求であるところ、これらの請求が認められるためには、損害が発生したこと、病院の過失による侵害行為があったこと、損害との間の因果関係が認められることが必要です。
具体的には、「患者が入院中にMRSAに感染した事実」「入院中にその細菌やウイルスが当該病院に存在した事実」「患者がMRSAに感染したことが病院の過失によること」「MRSAの感染によって生じた損害の額」「因果関係」が求められます。
もっとも、これらの立証、特に、病院に入院している間にMRSAに感染したことの立証は困難といえます。
上述のように、MRSAの効果の発症は、免疫の低下時に起こるため、元々MRSAを持っていた可能性もあるためです。
そのため、MRSAに感染しないために気を付けることが最優先ですが、もし、病院の過失によってMRSAに感染した疑いがある場合には、自身で対処しようとせずに、弁護士に相談して、適切なリーガル判断と、証拠の収集に向けた助言を受けることが求められます。
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