医療事故調査制度」とは?問題点や弁護士に相談した方がいいケースについても解説
2015年から始まった「医療事故調査制度」というものがあります。運用が始まってから数年が経ち、様々な問題点の指摘もされるようになっています。
ここでは同制度の内容について解説するとともに、制度の問題点、そしてこれに関連して弁護士に相談すべきケースについても解説していきます。
医療事故調査制度の概要
医療事故発生後、医療機関内で原因解明に向けた院内調査が実施されます。医療事故調査制度ではさらに第三者機関「医療事故調査・支援センター」(以下「センター」と呼ぶ。)がその調査結果を収集・分析するものとされており、そこから医療事故の再発防止に繋げることを目標としています。
その他同制度に基づき、センターは以下の業務に取り組むとされています。
- 医療事故の調査
- 院内事故調査結果の整理・分析、報告
医療機関がセンターに報告書を提出、センターのデータベースに格納。センターは医療機関に調査結果を報告。双方、必要に応じて確認や照会、再発防止策の検討を行う - 医療事故の相談・情報提供・支援
医療機関がセンターに対して相談をし、センターが助言を行う。また遺族からの相談内容も伝達 - 医療事故の再発防止に関する普及啓発
- 医療安全確保に向けた業務
医療事故調査制度の対象事案
同制度の利用にあたっては、対象事案の範囲を知ることがとても大切です。
なぜなら、医療事故のすべてを取り扱っているわけではないからです。同制度の対象となるには、以下の要件を満たさなければなりません。
- 医療従事者の提供する医療が原因(また原因と疑われる)
- 死亡または死産の結果が発生していること
- 管理者が結果を予期しなかったもの
つまり、大前提に医療に起因する必要があり、また事故の結果も死亡・死産という重大なものに限られています。その上で、その結果を管理者が予期していない事案でなくてはなりません。
どれか1つでも要件を満たさなければ医療事故調査制度は利用できません。
なお、単に「死亡する可能性はある」と伝えられていただけで対象から外れるわけではありません。患者個人の状態を踏まえて、個別に死亡等の予期がされていなければなりません。
医療事故調査実施の流れ
同制度に基づき調査を実施する流れを簡単に説明していきます。
医療機関が遺族に説明を行う
事故後、まずは医療機関が遺族の方に対して説明を行います。
その際以下の事項を伝えることとされています。
- 医療事故の日時・場所
- 医療事故の状況(疾患名や臨床経過など)
- 医療事故調査制度の内容
- 医療機関内での調査計画
さらに、解剖や死亡時画像診断が必要な場合には、解剖等に関する具体的な実施内容についての説明もなされます。
センターに医療事故の報告
次に、医療機関は発生した事故に関してセンターへ報告を行います。
報告内容は以下です。
- 日時・場所
- 医療事故の状況(疾患名や臨床経過など)
- 管理者の氏名
- 患者の情報
- 調査計画・今後の予定
医療機関が事故の原因等を調査
医療機関の管理者は、医療事故発生後、速やかに原因解明に必要な調査を行わなければならないと省令で定められています。この調査のことを「医療事故調査」と呼びます。
具体的には、以下の事項につき、必要性を鑑みて情報の収集・整理を行うとされています。
- 診療についての記録の確認
例)カルテ、検査結果など - 医療従事者、その他関係者へのヒアリング
- 解剖または死亡時画像診断の実施
- 医薬品、医療機器や設備などの確認
- 血液・尿などの検査
調査にあたり協力が必要なら、センターに支援を求めます。支援を求められたセンターは、業務委託している医療事故調査等支援団体に調査を行ってもらうよう依頼します。
調査結果を遺族に報告
調査を終えれば、その結果は遺族に伝えられます。
説明は、口頭または書面、もしくはその両方の適切な方法により行われなくてはなりません。
また、調査目的や結果に関しては、遺族が希望する形で説明するとの努力義務も課されています。
ただし医療機関には、説明にあたり現場の医療者などにも配慮し、匿名化することも求められています。
センターに対しても調査結果を報告
院内での調査結果の報告として、医療事故の日時や場所、管理者の氏名、患者情報などをまとめてセンターに提出しなくてはなりません。
これを受けたセンターは、情報を整理・分析し、再発防止に向けた普及啓発へと繋げるのです。
医療事故調査制度の問題点
医療事故調査制度の問題点としてまず挙げられるのは、「医療事故かどうかの判断が難しい」という点です。そもそも対象範囲が死亡・死産の医療事故に限られている上、医療機関側から「死亡は予期されていた」と主張される可能性もあります。しかも、こうした主張を受けてしまうと、医療の素人である遺族側から反論をすることは難しいです。
ただ、個人の病状等を踏まえず、「高齢であるため死亡は起こり得ます」「一定割合で死産は起こっています」などと抽象的一般的に説明しただけでは不十分と考えられています。
別の問題点として、「医療事故調査制度が正しく運用されないことがある」ということも挙げられます。医療機関が報告しないケースがありますし、過失を認めないことも珍しくありません。
また、「調査依頼をするのに費用がかかる」のも難点です。同制度では医療機関側からの調査依頼のみならず、遺族からも調査依頼を出すことができます。しかし依頼をする遺族側にも費用の負担があります。申請の妨げとならないような額にすべきとされていますが、少なくとも数万円は負担しなくてはなりません。
弁護士に相談すべきケース
医療事故は非常に専門性が高く、過失の認定をするための証拠集めなどでも大変な作業となります。
同制度を利用して解決を目指すこともできるかもしれませんが、「医療機関側が医療過誤を認めないケース」もありますし、その場合には法律のプロである弁護士を通して交渉を進めていくことが望ましいです。
その他「医療機関から報告書を受け取れない」「受け取った報告書の内容が正しいものなのか疑問がある」「損害賠償請求をするため訴訟を提起したい」といったケースでは弁護士への相談がおすすめです。弁護士を介してやり取りを行うことで医療機関側も真摯な対応をしてくれやすくなります。
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資格者紹介Staff
法律を知らないばかりに悩んでいる人々の力になりたい。
当事務所は医療過誤のご相談に豊富な経験がございます。
おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
所属団体・資格等
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
経歴
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- 2008年
- 東洋大学法学部 卒業
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- 2011年
- 東洋大学法科大学院 卒業
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- 2011年
- 司法試験合格
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- 2012年
-
弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
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- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要Office Overview
名称 | 初雁総合法律事務所 |
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資格者 | 野口 眞寿 (のぐち まさとし) |
所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
連絡先 (担当:野口) |
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