転医義務とは?医師の義務違反があった場合に損害賠償請求できるのか
病院を受診する際、いきなり専門的な医療機関を受診するのではなく、まずは幅広く診療できる医療機関を受診することも少なくありません。
しかし受診した医療機関の専門性や設備によっては、別の病院を受診することが適切だと判断されることがあります。
この記事では、医師の転医義務と、義務違反による損害賠償請求について解説します。
転医義務とは
受診した病院の設備や医師の専門性などによって、その患者の病状に適切に対応できないと判断できる場合、対応できる病院へ患者を移動させることは医師の義務です。
たとえば患者の病状が悪化し、自院で対応できなくなりそうな場合には、すぐさまその患者を対応可能な病院へ搬送しなければいけません。
たとえ症状の原因がわからない状態であっても、今後重篤な状態におちいる可能性が疑われる場合には、転医義務が生じる可能性があります。
搬送時も適切な対応をしなければならない
患者の病状が急変する可能性を予見できたにも関わらず、救急車を利用せずに別の病院へ搬送し、それによって損害を発生させた場合、医師の注意義務違反が認められることがあります。
急変時に適切な処置を行えるよう救急車を利用したり、医師が患者に付き添ったりする必要がある場合、医師はこれを適切に行わなければいけません。
転医義務違反による損害賠償請求
患者の状態に応じて適切に患者を転医させなかった場合、患者は医療機関や医師に対して損害賠償請求できる可能性があります。
損害賠償請求とは
損害賠償請求とは、相手の債務不履行や不法行為によって生じた損害に対する補填を相手に求めるものです。
病院で診療を受けるにあたり、患者と医療機関は、病気の診断と治療を適切に行う契約を交わしたものとみなされます。
医師がその責務を果たさず、患者が損害を受けた場合には、債務不履行として損害賠償の請求を認められる可能性があります。
転医義務違反によって請求できる損害賠償
損害賠償請求することで、慰謝料や治療費、逸失利益などの補填を受けられる可能性があります。
慰謝料とは精神的苦痛に対する補償です。
適切に転医が行われず、病状が悪化してしまったことは、精神的に苦しい状態です。
その精神的苦痛に対して支払われる金銭が慰謝料です。
病状が悪化したことにより治療や介護が必要になった際には、それにかかる治療費や介護費用を請求できます。
転医義務違反により命を落とした場合や、後遺障害が残り生活に制限が生じた場合には、将来的に得られるはずであった推定収入の補填を受けることも可能です。
転医義務違反により損害賠償請求するには
転医義務違反により損害賠償請求をするには、医師が転医義務を怠ったといえるのか、転医義務違反によって患者が損害を受けたといえるのか、調査を行わなければいけません。
医療調査を行った結果、医師に転医義務違反があると判断された場合、医師に損害賠償を求められます。
まずは当事者同士で示談交渉を行い、交渉が決裂した場合に医療訴訟へ移ることが一般的です。
医療調査
損害賠償請求するには、十分な証拠を確保して分析し、医療過誤によって損害を受けたことを患者側が立証しなければいけません。
患者の病状が悪化した原因や、医師が病状の悪化を予見できたかどうか、転医の必要性について証拠を集め医学的に調査します。
しかし証拠となるもののほとんどは医療機関が所有しているうえ、医療機関が必ずしも調査に協力的であるとは限りません。
カルテの開示や診療記録の証拠保全手続きが必要になるため、医療過誤に強い弁護士へ依頼すると安心です。
示談交渉や裁判などにより損害賠償を請求する
医療機関側の過失や損害との因果関係が認められそうな場合には、示談交渉や裁判などにより損害賠償を請求します。
示談交渉は患者側と医療機関側が直接話し合い、解決を目指す方法です。
示談交渉の場合、患者側と医療機関側の双方が合意した金額で示談金が支払われます。
医療機関側が自らの過失を認めている場合には、示談交渉で解決できることも少なくありません。
示談交渉では裁判を起こす必要がなく、早期に解決できる可能性があります。
示談交渉がまとまらなかった場合には、損害賠償を求める訴訟を提訴します。
解決までに時間がかかりますが、適切な証拠を用意して裁判に挑むことで、裁判所による公平な判断が期待できます。
まとめ
この記事では医師の転医義務違反と、それによる損害賠償請求について解説しました。
医師が自らの技術や設備では患者の病状に適切に対応できないと予測できる場合、対応可能な病院へ患者を搬送させる義務があります。
この義務を怠り、それによって患者が損害を受けた場合には、損害賠償請求できる可能性があります。
ただし医療過誤による損害賠償請求は簡単ではありません。
証拠保全や交渉などは、医療過誤に強い弁護士までご相談ください。
提供する基礎知識Basic Knowledge
-
医療事故・医療ミスの...
医療事故・医療ミスとは、医療に関わるすべての場面で起こる事故のことを指します。「医療過誤」と呼ばれることもありますが、厳密には医療過誤と医療事故・医療ミスは分けて考える必要があります。医療過誤は、医療事故等のうち特に“過 […]
-
意見書(私的鑑定意見...
医療過誤事件では、当時の医療水準に照らし合わせて、それを下回る医療が施されていたのかどうかが重要な争点となります。そのため医療文献の提示とともに重要なのが、この私的鑑定意見書です。これは医師の手によって作成され、原告、被 […]
-
医療過誤事件に必要不...
医療裁判においては、医療に関する専門知識を持つ医師の協力が不可欠です。被告側の医療機関が医療のプロである以上、それに対抗するためには同程度のスキルを持ち合わせた人間が必要になるからです。 当記事ではこの協力医について言及 […]
-
医療過誤で生じる病院...
医療機関では、医師や看護師などの医療従事者が適切な治療や処置を行うことが求められます。しかし、医療行為の過程でミスが発生し、患者に損害を与えた場合、それは「医療過誤」となり、病院側に法的責任が生じることがあります。本記事 […]
-
医療ミスによって請求...
医療ミスにより損害を受けた場合、その損害を補償するための賠償金を受け取れる可能性があります。実際にかかった医療費に対する賠償や、精神的苦痛に対する慰謝料など、賠償金には種類があります。この記事では、医療ミスに対して請求で […]
-
病院内での転倒事故や...
患者さんが病院内で転倒・転落し、これによって障害を負った場合や死亡した場合、医療機関に責任が認められるのでしょうか。また、認められるとしたら、どのようにして患者やその親族の救済が行われるのでしょうか。 医療機関 […]
資格者紹介Staff
法律を知らないばかりに悩んでいる人々の力になりたい。
当事務所は医療過誤のご相談に豊富な経験がございます。
おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
所属団体・資格等
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
経歴
-
- 2008年
- 東洋大学法学部 卒業
-
- 2011年
- 東洋大学法科大学院 卒業
-
- 2011年
- 司法試験合格
-
- 2012年
-
弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
-
- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要Office Overview
| 名称 | 初雁総合法律事務所 |
|---|---|
| 資格者 | 野口 眞寿 (のぐち まさとし) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
| 連絡先 (担当:野口) |
TEL:050-3184-3790/FAX:050-3730-7809 |
| 対応時間 | 10:00~18:00(事前予約で時間外も対応可能です) |
| 定休日 | 土日祝(事前予約で休日も対応可能です) |
| LINE 公式アカウント |
当事務所ではLINEでの相談対応が可能です。(LINE ID:@691yberd)
■登録方法について
|
