医療過誤で生じる病院側の法的責任とは
医療機関では、医師や看護師などの医療従事者が適切な治療や処置を行うことが求められます。
しかし、医療行為の過程でミスが発生し、患者に損害を与えた場合、それは「医療過誤」となり、病院側に法的責任が生じることがあります。
本記事では、医療過誤の定義や、病院が負う可能性のある法的責任について詳しく解説します。
医療過誤とは
医療過誤とは、医師や医療機関が患者に対して適切な医療行為を提供できず、その結果、患者の健康に損害を与えた場合を指します。
具体的には、以下のようなケースが医療過誤と判断される可能性があります。
- 誤診や診断ミス:本来必要な検査を怠ったために病気の発見が遅れた場合など
- 手術ミス:誤った部位を手術したり、医療器具を体内に残したりした場合など
- 投薬ミス:処方薬の種類や量を誤った場合など
- 説明義務違反(インフォームド・コンセント不足):治療前にリスクや代替治療の選択肢を十分に説明しなかった場合など
医療過誤が発生した場合、患者は医療機関や医療従事者に対して損害賠償請求をすることが可能になります。
医療事故との違い
医療過誤と混同されやすい言葉に「医療事故」があります。
医療事故とは、医療機関で発生した人身事故の総称であり、医療過誤もこの中に含まれます。
したがって、医療事故は医療過誤のように医療従事者の過失によるもの以外にも、医療設備による人身事故、医療従事者に被害が生じた場合なども含まれます。
医療事故のすべてが法的責任を問われるわけではなく、過失の有無が重要なポイントとなります。
医療過誤における病院側の法的責任
医療過誤が発生した場合、病院側にはさまざまな法的責任が問われる可能性があります。
主に考えられる責任として次の3つがあります。
(1)民事責任
医療過誤が認められた場合、病院や医師には民事責任が生じ、患者に対する損害賠償義務が発生します。
これは、患者が追求する病院側の責任であり、損害賠償の対象となるのは以下のようなものです。
- 治療費:誤診や手術ミスにより追加の治療が必要になった場合の費用
- 慰謝料:精神的苦痛に対する補償
- 逸失利益:後遺障害などによって将来の収入が減少する場合の補償
民事責任を問う場合、患者側は「医師や病院の過失」、「その過失による損害の発生」、「因果関係の証明」が必要になります。
これらの立証は容易ではなく、専門的な知識を持つ弁護士のサポートが重要となります。
(2)刑事責任
重大な医療過誤が発生し、患者が死亡したり重篤な後遺症を負ったりした場合、医師や医療従事者に刑事責任が問われることがあります。
これは、捜査機関が追求する医療従事者の責任であり、具体的な罪名としては以下のものが考えられます。
- 業務上過失致死傷罪
業務上過失致死傷罪に問われると、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金を科される可能性があります。
これらの刑事責任を問われるケースは比較的少ないものの、悪質な医療ミスや明らかな注意義務違反がある場合には、刑事告訴される可能性があります。
(3)行政責任
医療過誤が発覚すると、行政機関(厚生労働省や都道府県)から医師や病院に対して行政責任が問われる場合があります。
これは、国が追求する病院側の責任であり、具体的には次のような行政処分が下ります。
- 医師免許の取消や業務停止
- 病院に対する指導や監査
行政責任は医師個人だけでなく、病院経営にも影響を及ぼすため、医療機関は適切なリスク管理が求められます。
医療過誤を防ぐために病院が取るべき対策
医療過誤が発生すると、患者にとって大きな損害となるだけでなく、病院の信頼も失墜することになります。
そのため、医療機関側には未然に防ぐための対策が求められます。
医療従事者の教育と研修
医療の現場では、最新の知識や技術の習得が不可欠です。
定期的な研修やシミュレーションを行い、医療従事者のスキルアップを図ることが重要です。
ダブルチェック体制の構築
投薬や手術の際に、複数の医療スタッフによる確認を行うことで、ヒューマンエラーを防ぐことができます。
特に、薬剤の処方ミスや手術部位の確認ミスなどは、厳格なダブルチェック体制によって防止可能です。
インフォームド・コンセントの徹底
インフォームド・コンセントとは、患者が病気や治療についての十分な説明を受けた上で同意を得るプロセスで、十分な説明と同意の取得は、医療過誤を未然に防ぐ重要なポイントです。
治療方法の選択肢やリスクを丁寧に説明し、患者の理解を得ることが重要です。
医療ミスの報告と改善システムの確立
医療機関内で発生したミスを積極的に報告し、それを分析・改善する仕組みを作ることが、再発防止につながります。
ミスが発生する原因には共通点があるため、それらを特定し、適切に対策を講じることが重要です。
効果的な安全対策を実施するには、個人の責任を問うのではなく、システム上の課題として捉え、改善を図る問題解決型のアプローチが求められます。
まとめ
医療過誤が発生すると、病院側には民事責任・刑事責任・行政責任の3つの法的責任が問われる可能性があります。
医療過誤に関するトラブルを防ぐためにも、病院側はリスク管理を徹底し、医療の質を向上させることが求められます。
医療過誤についてわからないことがある場合は、弁護士への相談も検討してみてください。
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資格者紹介Staff
法律を知らないばかりに悩んでいる人々の力になりたい。
当事務所は医療過誤のご相談に豊富な経験がございます。
おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
所属団体・資格等
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
経歴
-
- 2008年
- 東洋大学法学部 卒業
-
- 2011年
- 東洋大学法科大学院 卒業
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- 2011年
- 司法試験合格
-
- 2012年
-
弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
-
- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要Office Overview
| 名称 | 初雁総合法律事務所 |
|---|---|
| 資格者 | 野口 眞寿 (のぐち まさとし) |
| 所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
| 連絡先 (担当:野口) |
TEL:050-3184-3790/FAX:050-3730-7809 |
| 対応時間 | 10:00~18:00(事前予約で時間外も対応可能です) |
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