誤嚥による窒息死で過失の有無を判断するポイントとは
入院している家族が誤嚥による窒息や誤嚥性肺炎で亡くなったのは病院の過失によるものではないかと考え損害賠償請求を検討しているという方がいらっしゃいます。
しかし、誤嚥による窒息死のすべての事例で医療機関や介護事業者側の過失がみとめられるわけではありません。
この記事では誤嚥による窒息死で医療機関や介護事業者側の過失の有無を検討するポイントとなるものを紹介します。
誤嚥による窒息死が起こりやすい背景
高齢者や中枢神経の障害を持っておられる患者の方は、嚥下機能が低下して誤嚥を起こしやすい状況にあります。
そのため、誤嚥性肺炎を引き起こして死亡する、誤嚥による窒息死という結果に繋がることがあるわけです。
誤嚥による窒息死で過失が認められるかどうかのポイント
過去の判例を見ると、誤嚥による窒息死で医療機関側や事業者側の過失を認めるかどうかについては以下の点がポイントになっていることがわかります。
- 患者や利用者が誤嚥することについて予見可能性があるか
- 提供した食物やその状態
- 医療機関や介護事業所の見守り体制や誤嚥に対応する対応
患者や利用者が誤嚥することについて予見可能性があるか
誤嚥による窒息死で医療機関や介護事業所に過失があるかどうかを争う際のポイントとなる1つの点は、誤嚥について予見可能性があるかどうかです。
たとえば、平成19年6月26日福岡地裁は、県立病院に入院していた患者がおにぎりを誤嚥して窒息しその後約9ヶ月後に死亡した件について県と看護師に損害賠償責任を認める判決を下しました。
その理由として裁判所は、誤嚥について予見可能性が十分あったことを認めています。
- この患者が前回入院の際に誤嚥性肺炎と診断されていた
- 本件入院後も「誤嚥のリスク状態」への対処が看護プランの重要事項としてあげられ、嚥下しやすい食事が提供されていたが軽度の嚥下障害がみられた
- 本件事故前日の朝食時に患者は牛乳を飲んでむせており、担当していた看護師も嚥下状態が悪いことを認識していた
- 看護日誌にも「食事摂取時は必ず義歯装着のこと。誤嚥危険大」と記載されて申し送られていたこと
こうした点から裁判所は誤嚥の予知可能性があったとしており担当看護師の過失を認めています。
提供した食物やその状態
誤嚥による窒息死で医療機関や介護事業所の過失が疑われるケースでは、提供した食物やその状態も重要なポイントになります。
先ほど紹介した判例ではおにぎりが提供されましたが、おにぎりの提供については過失を否定しています。
その理由は以下の通りです。
- おにぎりは患者本人が希望したもの
- これまでの約2週間おにぎりを食べても咽たことがなく、義歯がなくても歯肉を利用するなどすれば嚥下可能であった
- 注意して嚥下すれば誤嚥することはなかった
この判例からわかるように、誤嚥による窒息死では何をどのように食べさせたのかも重要な争点になります。
医療機関や介護事業所の見守り体制や誤嚥に対する対応
誤嚥による窒息死について医療機関や介護事業所に過失があったかどうかの判断では、医療機関や介護事業所の見守り体制や誤嚥が起こった際の対応も重要なポイントです。
例とした判例では、おにぎりを提供した際に誤嚥しないように見守ることがなかった、また誤嚥した際にすぐに吐き出させるなどの対応がなかったという理由で担当看護師の過失を認めています。
誤嚥による窒息死で過失を疑う場合は弁護士に相談
誤嚥による窒息死で家族が亡くなり医療機関や介護事業所の過失を疑っている、損害賠償請求を考えているなら弁護士に相談してください。
誤嚥について予見の可能性があったかどうか、医療機関や介護事業所の見守り体制や誤嚥が起こった後の対応は適切だったかどうかという判断はとても難しく簡単に判明するものではないからです。
したがって、誤嚥による窒息死で医療機関や介護事業所の過失を疑っているなら、診察の記録など医療行為に関わる記録すべてを保管し弁護士に相談してください。
弁護士に依頼すれば医療機関や介護事業所が保管している証拠について証拠保全に取り組むことができるので、証拠隠滅や記録の改ざんなどを防ぐことが可能です。
まとめ
この記事では誤嚥による窒息死で医療機関や介護事業所の過失が認められるかどうかのポイントを紹介しました。
過失の有無を争う際にポイントとなるのは以下の点でした。
- 患者や利用者が誤嚥することについて予見可能性があるか
- 提供した食物やその状態
- 医療機関や介護事業所の見守り体制や誤嚥に対応する対応
誤嚥による窒息死が医療機関や介護事業所のミスによるものであるという疑いがあれば民事上損害賠償請求がおこなえます。
しかし損害賠償を受け取るためには誤嚥による窒息死とミスの因果関係を立証しなければなりません。そのためには専門知識が必要です。
したがって、「家族が亡くなった理由について病院の説明に納得していない」「医療過誤を疑っているが判断が難しい」といった悩みがあれば弁護士にぜひ相談してください。
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- 2008年
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-
- 2011年
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- 2011年
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-
- 2012年
-
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神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
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- 2013年
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公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
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