看護師による薬の誤投薬
看護師は、入院患者のお世話や診察補助等の治療に関わる仕事を行う点で、患者の生命や健康と隣り合った仕事を行う職業といえます。
看護師が薬を入院患者等に誤投薬したことにより医療事故が生じた場合、看護師や医療機関にはどのような責任が生じるのでしょうか。また、被害者の方はどのように救済されるのでしょうか。
このページでは、看護師による薬の誤投薬が生じた場合の責任や救済についてご紹介します。
■看護師や病院側の責任と救済
看護師が医療過誤(医療事故のうち、医療上の過失によって患者を死亡・傷害させたもの)を起こした場合、民事上の責任・刑事上の責任・行政上の責任の三つの責任を負うことになります。
【民事上の責任】
民事上の責任は、損害賠償請求という形で負うこととなります。
これは、看護師として負う安全配慮義務に違反して医療過誤を起こした場合に、被害者に生じた損害に対して金銭で賠償を行うものをいいます。
安全配慮義務があったかどうかは、薬の誤投薬を予見することができたか、適切な対応を取れば結果を避けられたかどうかから判断されます。
なお、医療事故の民事上の責任は看護師のみが負うものではありません。
看護師は一個人であって資力に限界があるうえ、これを使用していた病院にも帰責できる場合には使用者責任として、医療機関に対しても使用者責任を追及することができます。
法的構成は不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)、使用者責任や、債務不履行に基づく損害賠償請求(415条)となります。
示談等によって解決できない場合には、被害者やそのご遺族が原告となって訴訟を提起することで救済を図ることが考えられます。
【刑事上の責任】
刑法211条に規定される、業務上過失致死傷罪が成立するおそれがあります。
看護師は、患者等の生命・身体に対する危険性を有する業種であるため、業務上の過失によって相手を死亡・傷害させた場合、「五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」が科される可能性があります。
もっとも、刑事上の責任を追及するのは、被害者やその親族ではなく、検察となっています。すなわち、被害者や親族としては、看護師を訴追したいと思うこともありますが、訴追を行うことができるのは検察に限られているため、被害者等は訴追してほしい旨述べることしかできません。
なお、刑事上の責任の判断を最終的に行うのは裁判所です。
【行政上の責任】
看護師は、医療過誤を行った場合、看護師免許の取り消しや、3年以内の業務の停止、戒告等の処分を受けることがあります。
このとき処分を下すのは、私人ではなく、国家機関となっており、医療過誤等においては、厚生労働大臣が行政処分を命令することになっています。
看護師が上記処分を受けるのは、保健師助産師看護師法9条各号の要件を満たしたときであり、同法条1号には「罰金以上の刑に処せられた者」と定められています。
そのため、上記行政処分を受けるのは、刑事上の責任が認められ、「罰金以上の刑に処せられた者」に限られます。
■おわりに
被害者が救済を求めることができるのは上述の通り民事上の救済に限られます。
そのため、どのような場合に医療過誤の責任が認められるのか、損害額はいくら認められるのか等、専門的な知識を必要とされる場合が少なくありません。
また、まず何をするべきなのかわからないことも少なくないでしょう。
医療過誤でお困りの方は、弁護士等の専門家に相談することが好ましいといえます。
初雁綜合法律事務所では、文京区、千代田区、渋谷区、板橋区、江東区を中心に、一都三県で皆様の医療過誤の問題に対してご支援をさせていただいております。「医療事故があったが、病院側の説明に納得がいかず医療過誤を疑っている」「医療過誤の疑いがあるが、判断が難しいので弁護士に相談をしたい」といったお悩みは当事務所までお気軽にご連絡ください。お電話でのお問い合わせも受け付けております。事前にご予約いただければ、時間外や、土日祝日でのご対応も可能です。医療過誤はお一人でお悩みにならず、まずはお気軽にご相談ください。
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- 2011年
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-
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-
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神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
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- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
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