医療過誤が発生した際に病院側が負う3つの責任|民事責任・刑事責任・行政責任
医療過誤に対して病院側が責任を負うことがあります。①民事責任、②刑事責任、③行政責任の大きく3種類です。
それぞれ責任追及をするための要件が異なり、責任追及による結果も異なります。
これらを整理することで、被害者個人としてはどのような行動を起こすべきなのか、何をすれば救済が受けられるのかが分かるようになります。
民事責任(損害賠償の請求等)
民事責任は私人対私人などでよく問題となる損害賠償責任などを指します。
医療過誤においては患者が病院に対して追及するのはこの責任です。
不法行為責任
相手方の故意や過失により損害が生じたときの賠償責任は「不法行為責任」と呼ばれます。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不法行為に基づく損害賠償請求を認めてもらう上でポイントとなるのは「過失の有無」と「因果関係」です。
まず前者についてです。
基本的には予見可能性や回避可能性の有無から判断されます。
つまり、損害の発生が予想できたのかどうか、そして避けることはできたのかどうかが重視されます。
とはいえ予見可能性と回避可能性があれば常に責任追及できるわけでもありません。
合併症の危険がある手術を実施する場合など、簡単には判断できないケースもあります。
また注意義務を果たしたかどうかに関しては、“その職業や社会的地位などから合理的に要求される程度の注意を払ったかどうか”で判断されます。
医療過誤においては行為時点における医学的知見に基づいて評価が分かれます。
後者の「因果関係」についてですが、これは“過失行為があったから損害が発生した”という関係性を意味します。
過失は認められるもののその行為とは関係なく生じた損害に対して責任を負うのは正当ではないため、因果関係の存在が必要とされるのです。
この判断も簡単ではありませんが、少なくとも“一点の疑義も許されない自然科学的証明”を要するものではなく、“通常人が疑いを持たない程度に真実性の確信を持ちうるもので足りる”と考えられています(最高裁判決昭和50年10月24日)。
債務不履行責任
本来果たすべき債務の履行を行わず、その結果損害が生じたときの賠償責任は「債務不履行責任」と呼ばれます。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
医療過誤においては、善良な管理者の注意を払った医療をしなかったこと(または過失ある医療をしたこと)を債務の不履行と捉えます。
また、債務不履行責任においても、債務を履行しなかったことにより損害が生じたという因果関係は必要です。
ただ、不法行為責任と債務不履行とでは遅延利息の発生時期が異なります。
不法行為では損害が発生した不法行為時点を起算点としますが、債務不履行では履行請求時を起算点とします。
なお、医療過誤のように生命や身体の侵害に関する損害賠償請求権を行使する場面では、どちらを根拠に請求する場合でも時効期間に差はありません。
使用者責任
個人が起こした損害であっても、当該個人を使用する組織に対して責任追及できるケースもあります。このときの責任は「使用者責任」と呼ばれます。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
医療過誤においては、「被用者」は医療従事者、「使用者」はその医療従事者を雇用している病院等(厳密には医療法人等)にあたります。
病院等が医療従事者との間で指揮監督関係にあることを前提に、当該責任を追及することができるようになります。
ただし病院側が相当な注意を払って監督をしていたことの証明をしたときには使用者責任の追及はできません。
刑事責任(刑罰の適用等)
刑事責任は、検察対医療従事者の関係で、罪の成立や刑罰の適用などを争う場合の責任を指します。
例えば、業務上必要とされる注意を払っておらず患者を死傷させた場合には「業務上過失致死罪」に問われることがあります。
有罪と評価されると、5年以下の懲役や禁錮、または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
医療過誤における刑事訴訟と民事訴訟の違い
刑事責任の追及は刑事訴訟において行われます。
ただし民事訴訟と異なり被害者である患者側は当事者になりません。
告訴・告発を行いそのきっかけを作ることはできますし、訴訟に参加する制度もありますが、構図は検察対加害者です。
また、刑事責任を追及して有罪であることが確定しても、被害者に対して補償がなされるわけではありません。
行政責任(免許の取消し等)
行政責任は、免許の取消しなどをめぐって国が追及する病院等の責任のことです。
そのためこちらも患者個人が直接関係するものではありません。
医療過誤における行政責任追及としては、医師法に基づいて行われるものがあります。
例えば医師法第7条では、医師が医事に関して不正や犯罪をはたらいたときや罰金以上の刑に処せられたとき、厚生労働大臣は医師に対して「戒告」「3年以内の医業停止」「免許取消し」の処分をすることができる旨規定されています。
被害者の方が救済を受けるためには民事責任の追及が必要
強い処罰感情を持っているときには、刑事責任の追及をしてもらうことで、ある種の被害者救済にはなるかもしれません。
しかし被害者の方が直接的に、金銭的な救済を受けるためには、民事責任の追及を行う必要があります。
捜査機関は被害者のために動くわけではありませんので、自発的に動いて証拠収集や請求手続、訴訟提起などを行わなければなりません。
また捜査機関のように法令上の強い権限を行使できるわけでもありません。
そこで損害賠償請求を成功させるためには、弁護士に依頼して被害者側もプロの力を借りることが大切です。
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資格者紹介Staff
法律を知らないばかりに悩んでいる人々の力になりたい。
当事務所は医療過誤のご相談に豊富な経験がございます。
おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
所属団体・資格等
- 第一東京弁護士会 住宅紛争処理審査会運営委員会 委員会
- 医療問題弁護団
- 公益社団法人 東京青年会議所
- 文京区基本構想推進区民協議会 委員
- 公益財団法人 文京アカデミー 評議員
- 文京区倫理法人会
経歴
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- 2008年
- 東洋大学法学部 卒業
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- 2011年
- 東洋大学法科大学院 卒業
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- 2011年
- 司法試験合格
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- 2012年
-
弁護士登録 第一東京弁護士会(登録番号46872)
神保町法律事務所 入所
文京区 行財政改革区民協議会 委員 就任
東洋大学法科大学院アカデミックアドバイザー 就任
公益社団法人東京青年会議所 入会
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- 2013年
- 初雁総合法律事務所 設立
公益財団法人文京アカデミー 評議員 就任
事務所概要Office Overview
名称 | 初雁総合法律事務所 |
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資格者 | 野口 眞寿 (のぐち まさとし) |
所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル4F |
連絡先 (担当:野口) |
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