手術後の異物残留|慰謝料請求はできる?
手術とは、外科的危機やメスを用いて患部を切開し、治療的処置を施すことをいいます。手術を行うことは、体内への侵入を伴う点で大変危険な行為であり、医者の専門的知識・技術なくして安全に行うことができません。
もっとも、どれだけ細心の注意を払っていても危険性が伴うものです。
例えば、手術に用いたガーゼなどの道具が体内に置き忘れてしまう、異物残留の危険があります。近年、異物が残留しないようにする工夫や技術の進歩によって異物残留は減少していますが、依然ゼロになっていません。
では、手術によって異物残留が生じた場合、慰謝料請求はできるのでしょうか。
このページでは、手術後に異物残留があった場合の慰謝料請求の可否についてご紹介します。
■手術後に異物残留があった場合の慰謝料請求の可否
例えば、手術後にガーゼを体内に残留した場合、部位によって異なりますが、以下のような症状が生じることがあります。
生体内に異物が入り込んだ場合に、防衛反応として炎症が起きることがあります。これを異物肉芽種といいます。
その他、腸の残存の場合には腸閉塞(イレウス)という、腸管内容物の肛門方向への輸送が障害されることによって起こる疾患が生じ得ますし、肺の残存の場合には、ARDSという重症な呼吸不全をきたす病気をおこし得ます。
その他にも、諸々の感染症の原因になるおそれがあります。
では、このような不利益を被った患者は慰謝料請求を行うことができるのでしょうか。
異物残留が生じた場合に生じる医療機関の責任の発生根拠は民法709条に規定されている不法行為責任が挙げられます。
不法行為責任とは、加害者の過失によって被害者に損害が生じた場合に、その損害を金銭で賠償する責任をいいます。
そのため、医療機関に過失があったのか、損害との間に因果関係があるのかどうかが争点となり得ます。また、慰謝料請求とは、精神的損害に対する賠償である点で、損害の額も問題となります。
この点、「手術に使用する器具を適切に管理し、患者の体内に遺残しないということは、医療者に課せられた基本的な義務」とされているため、体内に異物を残留した事実が認められれば、過失が認定される可能性が高いといえます。
精神的損害も、客観的な事情から認定することになりますが、異物が残留したことによって生じた症状の軽重や期間の長短、異物の摘出の希望の有無等の事情を考慮して判断されることになります。
加えて、上記精神的損害が異物残留と無関係のものであれば、因果関係は認められないので、その分の損害については損害賠償義務を負いません。
■おわりに
以上のように、異物残留があった場合の医療機関に対する慰謝料請求の可否については、不法行為の成立の有無という問題に帰着します。
不法行為責任が認められるかどうかは、不法行為が成立する要件を満たすのかどうかという問題となり、かかる要件の充足性の判断には専門的な知識や判断力が必要となります。
手術後に異物の残留の疑いがある場合や、異物の残留が発覚した場合で、医療機関に対する慰謝料請求を検討している患者の方やそのご遺族の方は、弁護士等の法律の専門家に相談することが好ましいといえます。
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